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以前購入したUSB接続の外付けHDDが残っており、モバイルルータしか保有していないため余っておりました。 しかし、TimeCapsuleでのMBAをバックアップしたいと考えており中継機の購入を決意しました。 ダンボーに特段興味があった訳ではありませんが、利用したい機能を満たすのがこちらだけでした。 アクセスすると設定画面が使いやすく、メーカーのWebサイトにはQAも用意されていたので非常に分かりやすかったです。 今回の購入を機にPlanex社が気に入りました。 また利用したいです。#13;

七夕雑感2022年07月03日 15時33分25秒

ここしばらくは狂気を発するぐらい暑い日が続き、ものを考えることも難しかったですが、今日は久しぶりの雨で、少し過ごしやすくなりました。

   ★

7月になったので、七夕の話題です。
七夕というと、「笹の葉 さーらさら」の歌が口をついて出ますが、ネットで検索すればすぐ分かるように、あれは「たなばたさま」というタイトルの曲で、昭和16年(1941)に文部省が発行した「うたのほん 下」が初出だそうです。いわゆる文部省唱歌ですね。

(「うたのほん 下」に掲載の「たなばたさま」。国会図書館デジタルコレクションより。

今ではあの歌のない七夕は考えられませんが、考えてみると、江戸時代はもちろん、明治や大正時代の子供も、昭和戦前の子供だって、「笹の葉さーらさら」と歌わずに、七夕の夜を過ごしていたわけで、なんだか不思議な気がします。まあそれを言えば、昔のひな祭りに「あかりをつけましょ ぼんぼりに」の歌は流れていなかったし(初出は昭和11年/1936)、正月を前に「もういーくつ寝ると」と歌うこともありませんでした(同 明治34年/1901)。

でも、「あの歌が流れないなんて、昔の年中行事はさぞさみしかったろうなあ…」と思うのは、後世の人間の錯覚で、事態はたぶん逆でしょう。「たなばたさま」の歌は、地方的差異の大きかった民俗行事に公教育が介入・介在することで、その均質化が進んだ――言い換えれば貧弱になった――例のひとつだと思います。(あの歌自体は嫌いじゃありませんが、「笹の葉と短冊」だけに光を当てて、他の七夕習俗の要素、たとえば梶の葉とか、縫織の技とか、管弦とか、農作物のお供えとかを捨象したことは、やっぱり貧弱化につながったと思います。)

   ★

上で公教育の介入による行事の変質ということを言いましたが、私が以前から疑問に思っていることのひとつに、「七夕で短冊に願い事を書く風習はいつ始まったのか?」というのがあります。

もちろん、昔の人も七夕の宵は星に願いを託しました。
しかし、戦前まで短冊に書きつける文句といえば「天の川」と「七夕」の2つがポピュラーで、それに加えて古歌や古詩、あるいは自作の和歌を書いて、それによって歌道や書道の上達を願うという形が本来だったはずです。そのことは江戸期の風俗画でも確認できます。

今や全国津々浦々で、笹竹に子どもたちの、それこそありとあらゆる願い事が翻っていますが、あれは多分そんなに古いことではなくて、戦後になって保育園や幼稚園、小学校で始まったことだと睨んでいます。(さらにさかのぼると、大正自由教育の流れの中で、一部の進歩的な学校や園では、すでにそういう試みがあったのではないか…とも想像しています。)


そもそも「お祖母さんの病気が治りますように」とか、「世界平和」とかをお願いされても、織姫や彦星にそれを叶える力があるとは思えません。

   ★

ただし、この辺はよくよく注意を要することで、七夕に短冊をぶら下げて、「字が上手になりますように…」と願うのは、元をたどれば奈良・平安まで遡るのかもしれませんが、それが浮世絵の題材になるぐらいポピュラーになったのは、江戸時代の寺子屋で年中行事として行われるようになって以降のことらしく、何でも「昔」とひとくくりにして言うのも危険です。

(「風俗画報」明治31年(1898)7月10日号より、富田秋香画「寺子屋七夕祭之図」。明治になってからの江戸回顧図と思います。)

七夕が教育的な配慮のもと、子供の行事化したという点で、江戸の昔と令和の今には共通する部分があり、民俗を考える際は、このように変化する要素と連続する要素を常に考えておかなければいけない…とか、素人の私が言っても何の説得力もありませんが、そういう気がします。(では、近世以降と近世以前を対比させるとどうか?といっても、江戸時代以前の民間の七夕習俗は、資料もありませんし、まったく不明というほかないんですが、農村の七夕習俗には、古風な要素が一部痕跡として残っていたと思います。)

   ★

なんだか話を大きくし過ぎて、まとまりませんが、七夕という行事も振り返ればいろいろ陰影に富んでていて、今の七夕のありようをもって、過去を推し測ることは到底できない…ということが言いたかったのでした。(なお、上では触れませんでしたが、今の七夕に影響したものとしては、公教育以外にも、<日本三大七夕>のような「観光七夕」「商業七夕」の成立と発展も大きいです。)

生物学の授業1939(その3)2022年06月25日 16時41分39秒

ところで現在の中学校では、生物の授業はどうなっているのでしょうか?


上は(株)進学会さんのサイトから勝手にお借りしたものですが、今の中学校の理科の生物分野では、大体こういうことを習うのだそうです。

80年余り前と今とを比較すると、意外にというか、当然というか、あまり習うこと自体は変わっていません。基本となるのは、大まかな生物分類の知識と、体の構造(細胞と器官)とその働き(光合成、呼吸、循環、消化、生殖)についてです。まあ、細部を見れば、今は生態系と環境のことを重視しているし、昔は保健分野(衛生の話題)が理科にくっついていたので、授業にやたら寄生虫の話題が出てくるという違いはあります。

   ★

それよりも大きな違いを感じるは、叙述のスタイルです。
一言でいうと、当時は妙に「文学的」です。川崎君のノートは、教科書の文体や、先生の口述を反映しているのでしょうが、その言葉遣いや、論の立て方・進め方に、何となく文学的な匂いを感じます。

たとえばこれから生物学を学ぼうという、1学期の第2回目の授業で、先生はこんな実験に言及します(おそらく先生も実際にやったわけではなく、あくまでも思考実験だと思います)。


それは同じぐらいの大きさのソラマメと小石をならべて土に植えるというもの。


ずっと観察を続けていると、ソラマメからは、やがて根と芽が出て、葉を茂らせ、花が咲き、実がなります。それに対して小石の方に何の変化もない。あるいは、陶製の擬卵と本物の卵を鶏に抱かせても又然り。生物は常に変化し、無生物は変化しない。一体なぜか?

 「これは不思議なことだときがつくと、これをどうしてもしらべずにおけなくなるのが人性の常である。しかし人はこれに不思議を感じない人が多い」

目の前の事実を、当たり前ですませずに、なぜなんだろう?と疑問に思うことこそ、人間の人間たるゆえんであり、そこから「科学する心」も生まれるのだ…と先生は言いたいわけです。こういう考えさせる授業は、今でもあると思いますが、問題設定の仕方がいきなりというか、相手の虚を突くところが、少なからず文学的と感じられます。

続く第3回の授業でも、

 「前回に述べたように、蚕豆や鶏卵は小石や陶器とちがって色々の変化をなすものである。
野蛮人は物を考へないが文明人たるものは物を考へねばならぬ。
故に我々文明人は斯様な現象が起るかを不思議であると思はづにいられない。」


と、同じテーゼが繰り返されており、先生としては、この点に相当力こぶを入れていました。「文明人」と「野蛮人」を対比するのは、いかにも時代がかっていますが、まあ、ここでは「知性を重んずる人とそうでない人」ぐらいの意味に捉えていいのかもしれません。

こうして我々の心に芽生えた疑問に、我々はどのように答えを見出すべきか?

「これをしらべるにはその動物を解部〔剖〕するのも一つの手段であるし又その動物を培養飼育をするのも一つの手段である。
又他人の経験録すなはち昆虫であればファーブルの昆虫記を読むといったふうにするのもよい。」


「生物の生活の現象をしらべるにはどうして研究するのが便利か
蚕豆の根を針の先ほどとってこれを顕微鏡で観ると図の如く見える」

こうして細胞の話から始まり、授業はいよいよ本格的な内容に入っていきます。
余談ながら、授業の中でファーブル昆虫記が大いに推奨された事実は、日本人のファーブル好きを物語るもので、ファーブルは教育的良書として、当時は今以上に喧伝されていた気配があります。

   ★

以後の内容は、当然のことながら教科書的な記述が多いですが、ところどころにリアルな授業の息吹が感じられる個所があります。たとえば、2学期の第5回の講義は、動物の呼吸について学ぶ回なのですが、なぜか唐突に上杉鷹山のことが出てきます。


 「かてもの
 この本は往昔山形の米沢の藩主上杉鷹山公が時の学者共に研究させて作った本である。当時は大ききんがたびたびあって人民はとても苦しんだ そこで上杉鷹山公は人民の苦るしみを思って終いにこの本をつくらうと意を決したのである。この本はだれにも読めるやうにかなまでがふってある。内容は米等があまり取れなかったのでその代りに何をたべればよいか又どうして食べればよいかなどとくわしく書いた本である。
明治時代等は何でも西洋のものがよいことにして西洋のものでなければだめであるといふ時代であったのでこの本などはわすれられた。しかし欧州大戦に独逸(Germern〔ママ〕)は野生の草を食用に用ひたので近来になって又日本の物がよいといふ時代になって再びこの本を造り出したのである。」

「かてもの」は「糧物」の意で、飢饉の際の救荒食物のことだそうですが、授業はこの後さらに脱線して、生徒たちは自ら「かてもの」作りを経験するため、校庭で育てていた大根の世話に精を出したことが書いてあります。

 「かてものの様なものを造る練習に夏休中に小使さん達が造ってゐて下さっ〔た〕大根をつくる事にした。今日は時間の余に1所に二〔三?〕株ある所を二株にしなほ時間があったので一株にし、なほ葉の後についてゐる蛾や蝶の卵をのぞきかつ家にもってかへった。」


   ★

こんな風に見ていくと、本当にきりがありません。
当時の授業の進め方は、学校によっても違ったでしょうし、先生の裁量も大きかったと思いますが、少なくとも川崎君の受けた授業はとても魅力的です。

ここに宮沢賢治的世界を重ねて見ることは容易ですけれど、現実世界ではきな臭いものが間近に迫っていました。

(3学期第12回のノート。日付は2600年1月15日。1940年(昭和15年)は皇紀2600年だというので、世間は大層浮かれていました。しかし翌年には太平洋戦争に突入して、学校も徐々に授業どころではなくなっていきます。)

(中途半端ですが、この項いったん終わり)

生物学の授業1939(その2)2022年06月19日 16時07分32秒

今でいうところの中学2年生に進級した川崎浩君。

川崎君が在籍した学校名を探したのですが、それはどこにも書かれていませんでした。ウィキペディアによれば(↓)、旧制の7年制高校は台湾の台北高校を含めて9校のみで、わりとマイナーな存在のようです。創立はいずれも大正末から昭和の初めにかけてで、時代的にもかなり限定されます。


このうちのどこかに在籍した川崎君の生物学の勉学のあとを追ってみようと思うのですが、まず外形的なことを述べておくと、このノートは1学期が18回、2学期は16回、3学期は22回の合計56回分の講義録から成ります。(なお、当時の学期の区切りは今と違って、2学期の授業は6月26日から、3学期の授業は11月22日から始まっています。)

そして全ての回について、その都度ノートを先生に提出して添削を受け、ときには「も少し丁寧に書きなさい」と注意を受けたりしながらも、延々と川崎君はノートを書き継いでいきました。


その間に、Nの向きを間違えることもなくなったし、最初は「NOⅡ」(第2回講義の意)としか書かれてなかった冒頭部も、最後の方は「第十八回 第九章 第二課 下等生物の生殖(其の二)」とシステマティックに書くようになり、川崎君にも成長のあとが見られます。


(川崎君の悪筆は最後まで変わりませんが、レタリングは上手くなりました)

   ★

授業は、1学期の最初の方は、

第1回 生物が生存する条件
第2回 生物と無生物、純正生物学と応用生物学
第3回 細胞
第4回 キュウリの種まき、植物の細胞観察、細胞の構造

…という具合に始まって、以下、細胞分裂、単細胞生物と多細胞生物、生物の栄養法、光合成、澱粉、下等動物の栄養法、昆虫の消化器、蝶の構造と観察、甲殻類と軟体動物、脊椎動物、哺乳類、(ここから2学期)寄生虫と寄生植物、生物の呼吸作用と循環作用、排せつ作用、蛙の解剖、植物の外皮、貝殻の真珠層、動植物の護身作用、(ここから3学期)保護色・警戒色・擬態、動物の移動運動、動物の感覚

…と続き、3学期の最後の方は

第15回 第9章 生殖 第1課 下等生物の生殖(其の一)
(アメーバ、バクテリア、ゾウリムシ)
第16回 同(ヒドラ)
第17回 同(菌類、スギゴケ、シダ)
第18回 第2課 下等生物の生殖(其の二)(つくし、とくさ)
第19回 同(サンショウモ、クラマゴケ)、第3課 顕花植物の生殖
第20回 第4課 下等動物の生殖(クラゲ、サナダムシ)
第21回 同(肝蛭、肝臓ジストマ、ミミズ、ヒル、回虫)
第22回 同(十二指腸虫、蟯虫、ウニ・ヒトデ、タコ・イカ・ハマグリ・アサリ・サザエ・ホラガイ)


…と、生殖作用に多くの時間をかけて、1年間の授業を締めくくっています。

   ★

次回以降、ノートの中身を見ながら、当時の生物学の授業を振り返ってみようと思いますが、ここで次の疑問に答えておきます。

そもそもこのノートはどのように作成されたのか?

このノートには丁寧な彩色図がたくさん入っており、いろいろな図版の切り抜きも貼り込んであります。授業を聴きながら、そんな作業をする余裕があったはずはないし、「今日は○○について習った」という書きぶりから察するに、これは講義の最中に筆記したのではなくて(そういう本当の意味でのノートはまた別にあったはずです)、授業後に、今日習ったことをまとめた「復習ノート」なのでしょう。(それを先生に提出して、チェックしてもらっていたわけです。たくさんある科目のひとつに過ぎない生物学でも、それだけ時間をかけて学んでいたとなると、全体としては相当な学習量ですね。)

(応用生物学の例として挙がっている金魚の品種改良)

それともう1つ気になったのが、ノートに貼られた図です。
そこには学習雑誌の付録っぽいのもありますが、どうも教科書から切り抜いたとしか思えないものもあって、教科書を切り刻むというのは、今の感覚からすると違和感を覚えますが、それを先生も咎めていないところを見ると、少なくとも川崎君の学校では、既成の教科書よりも、自分の手でまとめた講義録に重きを置いていたような気がします。

(鳩の解剖図)

(この項つづく)

生物学の授業1939(その1)2022年06月17日 18時24分40秒

私が子供のころの理科室の思い出も、相当な過去に属するのですが、それよりもさらに昔、戦前の理科の授業の思い出を、鮮やかに今に伝える品が手元にあります。


すなわち昔の理科のノートを1冊にまとめて製本したものです。


標題は「生物学」。尋常科2年級の川崎浩君の力作です。

「尋常科2年級」というのを、私は最初「尋常小学校2年生」の意味だと思いました。これは今の小学2年生と同じです。でも、7つか8つの子供が「生物学」を学ぶのはちょっと変だなあ…と思って調べたら、これは「高等学校 尋常科2年生」の意味でした。すなわち昔の旧制高校の中には、今でいう中高一貫校に当たる「7年制高等学校」という区分があって、その7年課程を年少の4年と年長の3年に分かち、前者を「尋常科」、後者を「高等科」と称したのだそうです。

昔の学制はややこしいので、ウィキペディアから説明図を借ります(クリックして拡大)。


上は1935年頃の学制で、左端に「7年制高校」が見えます。
結局、尋常科2年級とは、今の中学2年生と同じ学年に当たります。

現在、大学の講義録をとっておく人がどれぐらいいるのかはわかりませんが、昔は講義の筆録を貴重な資料として後々までとっておく、心掛けの良い人が少なからずいました。そして、そういう習慣は大学のみならず、初等・中等教育段階でもあったらしく、この川崎君のノートも、稚拙といえば稚拙ですが、1年間の立派な学習の記録として、こんなふうにきちんと製本されて、ながく手元に留め置かれたと見えます。

(Nの書き方がちょっと変。)

ノートは1939(昭和14)年4月7日から始まっています。


「今日は今迄使用してゐた科学入門ではなくて
生物学(Biology)についておそはることになった。
此の生物学は人及び動植物は何故生きてゐるのだらう。
又生きて行くにはどうゆう条件が必要なのだらう。
といふことをきはむる学科は既〔即〕ち生物学である。」

たどたどしくも初々しい、川崎君の生物学探求の足跡を、さらにたどってみます。

(この項つづく)

蝶の翅2022年06月13日 19時25分42秒

今回家を片付けて、これまで目に触れなかったものが、いろいろ表に出てきました。
例えば、三角紙に入った蝶の標本。


これは完全な虫体ではなしに、翅のみがこうして包んであります。長いこと仕舞いっぱなしだったわりに、虫損もなく、きれいなまま残っていたのは幸いでした。

(クロムメッキのケースも、今回引き出しの奥から発見。本来は医療用だと思いますが、密閉性が高いので、改めて標本ケースに転用)

種類も、産地も、系統立ったものは何もないし、翅も破れているものが多いので、標本としての価値はほとんどないと思います。でも、これは特にそういうものをお願いして、知り合いの知り合いの方から譲っていただいたのでした。

なぜかといえば、それは鱗粉を顕微鏡観察するためです。
別に研究的意味合いはなくて、あたかもカレイドスコープを覗き込むように、単に好事な趣味としてそうしたかったのです。


鱗粉の名の通り、鱗状の構造物が視界を埋め尽くし、不思議なタイル画を描いているのも面白いし、モルフォ蝶などはステージが回転するにつれて、黒一色の「タイル」が徐々に鮮やかなエメラルドに、さらに一瞬淡いオレンジを呈してから輝くブルーに変わる様は、さすがに美しいものです。

(下半分はピンボケ)

でも、忌憚のないところを言えば、私の場合、鱗粉の美しさを愛でるというよりも、まさに鱗粉を顕微鏡で眺めるという行為に酔いしれているところがあって、この辺は子どもの頃から進歩がないなと思います。


   ★

私の人生の蝋燭もだんだん短くなってきましたが、夏の思い出はまた格別で、ふとした瞬間に、あの日あの場所で見た陽の光、木の葉の香り、友達の声を思い出します。

今年も理科室のノスタルジアの扉が開く季節がやってきました。

700 対 702022年06月12日 07時11分43秒

昨日の件は、結局送料70ドルで決着がつきました。ああ良かった。

まあ、普通に考えれば70ドルでも結構な額ですが、何せ話の前段があるので、そこに仮想的な割安感が生じるわけです。でも、話の前段である「送料700ドル」というのも、実は私の心のおびえが生んだ早とちりで、ブセボロードさんは単に「品代が700ドル」と言いたかっただけかもしれません(昨日の適当訳の原文は、“The package you were interested in would cost 700$ for both”です)。こういのを「疑心暗鬼を生ず」というのでしょう。

そして700ドルといえば、これまた極めつけに高価ですが、それがブセボロードさんを応援し、ウクライナ経済を支援することにつながるならば、ボーナスをはたく価値は十分あると信じます。(…と言いつつ、それも荷物が無事届くことが前提で、もし途中で行方不明になったら、そう勇ましいことも言ってられません。己の卑小さを恥じます。)

しばらくは毎日そわそわしながら、トラッキング情報を見ることになるでしょう。

(ウクライナと日本。ウィキメディア・コモンズより)

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モノは万里の波濤を越えて2022年06月11日 15時55分00秒

ずいぶん長いことブログを放置していました。

この間何をしていたかといえば、ひとつは前にも書いたように、ハーシェル展の準備作業をしてたわけですが、それともう一つ家の片づけに精を出していました。これは家人が職場に置いていた大量の資料を持ち帰ることになったため、いやでも応でも片付けざるを得なかったのです。

そのため、今回はかなり本格的に片付けを行いました。
おげでだいぶ部屋がスッキリしました。…というのはちょっと誇大で、見た目はそう変わらないんですが、今回はまさに「アンタッチャブル」だった物入の奥にも手を伸ばし、それまでデッドスペースだったところを蘇らせたのは、我ながら上出来です。つまり、見えないところが片付いたわけです。見えないところに堆積した物というのは、意外に潜在意識に圧迫感を与えるもので、それが無くなっただけでも、気分的にずいぶん楽になりました。

(ふと脇に目をやると机の上にプレーンな面がある…という、当たり前のことが無性に嬉しかったりします。これも片付けの成果です。)

   ★

最近は急速な円安で、海外からモノを買うのが難しくなっています。
まあ、せっかく部屋を片付けたのだから、再びモノを増やすのも良くないし、当面は自重したいと思います。

それでも、「これだけは…」と思ったものがあります。本ブログではおなじみのブセボロードさんの新作です。新作が出たということは、即ちブセボロードさんとお仲間の製造ネットワークが復活したことを意味するので、これは祝賀の意味でも購入しないわけにはいきません。

問題は現在のウクライナからの配送状況です。
ブセボロードさんのオンラインショップの冒頭には、「ANY PURCHASES YOU MAKE AT THIS STORE ARE AT YOUR OWN RISK」 と大文字で書かれています。

自己責任は元より承知。しゃにむに注文を入れると、ブセボロードさんから以下の返信がとどきました。

「玉青さん、あなたが関心を持たれた品2点を送るには700ドルかかります(注:送料込みで700ドルではなくて、送料が700ドルです。そう、70ドルではなくて700ドル!)。ですから、代金の支払いは少しお待ちください。送料をもっと安くする方法を思案中です。

以前もお話ししたように、ウクライナ発着の国際配送業者、たとえばUPSとかFedexとかは、現在国内で営業を停止しています。したがって唯一可能な方法は、国営郵便だけです。でも今回の荷物は、私がふだん国営郵便に任せる品よりも高価ですし、今春、アジアに送った唯一の品は4月末に発送したものですが、それがまだ先方に到着しないので、少なからず不安に思っています。

しかし、もう一つ方法があるのを思い出しました。ノバ・ポストです(注:ノバ・ポストはウクライナの宅配会社らしいです)。同社は通常ウクライナ国内向けしか扱っていないのですが、同社にはノバ・ポスト・グローバル(NPG)というハイブリッドオプションがあります。これは外国のハブまで自前で荷物を運び、そこでUPSに荷物を引き継ぐというものです。UPSよりも若干安価で、若干長い時間がかかります。

私は去年1回それを試してみましたが、悪夢のような経験でした。係員はウエスタンビッド経由で発行された自社の追跡番号が分からなかったし、私は手続きのため、アプリをインストールしなければならず、そもそも社員はNPGの仕組みを知りませんでした。彼は倉庫からプリンターを持ってきて、コンピュータにつなぎ、ようやく必要な書類を打ち出しました。1時間を無駄にして、私はもうNPGは使わないぞと心に誓いました(ウクライナ国内であればノバ・ポストの配送はとてもスムーズなのですが)。しかし、今の状況では、NPGも選択肢のひとつだと思います。私たち二人が配達を待って数か月無駄にするより、私一人が1時間無駄にするほうがましです。」

   ★

ブセボロードさんは信頼できる人だと改めて感じるとともに、ウクライナの日常の一断面を見る思いがします。戦争の影響は、本当にいろいろなところに及ぶものです。

21世紀になり、紛争当事国からでもメッセージやデータは一瞬で届くようになりましたが、モノの方はやっぱりそうはいきません。当面は遣唐使のころとあまり変わらない気分で、首を長くしてモノを待たねばなりません。(でも、将来的にVR世界がリアル世界を圧倒するようになると、人とモノの関係も大きく変わるのかもしれません。)

キーウだより(3)2022年05月09日 05時51分58秒

しばらく連絡の途絶えていたブセボロードさんから、久しぶりにメッセージが届きました。しかも嬉しいことに新作アストロラーベの写真を添えてです。そこには、「この新たなプロジェクトをどうしても自慢したかったものですから…」と書かれていました。

ブセボロードさんの無事を祝うとともに、こんなときに何ですが、このアストロラーベは入手可能なのか、つい聞いてしまいました。ブセボロードさんもそれを望んでいるように思えたからです。それに対する返信があったので、キーウの日常とともに、ここにご紹介しておきます。

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玉青さん、お気遣いありがとう。

最近のキーウは、ほとんど変化がありません。我々も今やインターネット・ニュースから情報を得ており、3月頃のように榴弾砲のうなりから学んでいるわけではありません。多くの避難民が町に戻り、車を駐める場所を見つけるのが再び難しくなっています。

最近の主な問題は、燃料の不足です。我が国の石油処理プラントは、開戦前にロシアの投資家が買収して結果的に操業停止に追い込まれて放棄されたか、開戦後にミサイルで爆撃されたかのどちらかで、しかもロシアの石油を処理していたベラルーシからの輸入もストップしたため、タンクを満たすのがだんだん難しくなっています。ガソリンを販売している店は、車が行列しているのですぐに分かります。今では電気自動車を持っていることが、大きなアドバンテージです。

私は市の郊外に当たる、ゴストメルとイルピンに数回出かけ、戦闘後の残骸処理の手伝いをしました。通りはガラス片、断熱材、壊れたタイル、電線、材木でいっぱいです。しかし今では旅行先も必要最低限のものに制限しなければなりません。

Vitaly〔アストロラーベの金属加工を担当していた職人さん〕もキーウに戻り、仕事に復帰しました。でも、まだ徴兵事務所でいくつか公的な手続きが残っています。

ご覧になったアストロラーベは、1月時点でエッチング済みの部品を使って組み立てたものです。もちろんお買い上げいただけます。その場合、早めにお届けする方が、後からそうするよりもずっと簡単です。

というのも、私は現在、一連の製造工程を復活させるために努力しており、今週中にも例のアストロラーベ用のものも含め、金属板のエッチングを発注する予定だからです。したがって全てがうまくいけば、そして途中で工房が爆撃されなければ、数週間以内にご用意できると思います。

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とりあえずホッとしました。
ブセボロードさんとそのお仲間が、再びアストロラーベ作りに取り組めるだけの日常がキーウには戻ってきたのかな…と思います。しかし戦況は依然不透明であり、この日常がいつまで続くか、予断を許しません。特に今日、5月9日はロシア側に何か新しい動きがあるのでは…と言われているので、何となく落ち着きません。

時計屋開業2022年05月03日 11時15分36秒

その後、例のハーシェル展の準備は着々と進んでいます。

準備というのは、出展候補のリストアップ作業で、エクセル表に候補となる品のサイズとか、出典とか、簡単な説明を記載して、そこに画像も添えるという、何となく辛気臭い作業です。品物の数が少なければまだしもですが、数が多くなると、それもなかなか大変です。でも、その作業も終わりが見えてきました。

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ときに、それとは全然関係ない話ですが、急に部屋の整理をする必要に迫られて、まあメインは本の整理ですが、それ以外のモノについても1点だけ処分を考えています。そして、こんなことはブログ開設以来初めてですが、もし興味のある方がいらっしゃればお譲りしたく、ここに広告を打ちます。

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それは以前紹介したアメリカ製の「お手軽な天文時計」です。


去年記事にする際に箱から出して、その後も箱にしまいっぱなしだったのですが、結構箱自体がかさばって、部屋を圧迫していました。

私が2017年に購入したときの画像が以下です(当時はPDFではなく、XPSでページを保存していたので、再加工が難しく、画像として切り出しました)。


当時は円が強くて、1ドル108円ぐらいでした。画像では「Sold for $159.99」となっていますが、実際には120ドルのオファーで合意しているので、結局品代は13,000円ぐらいです。それを7500円の送料を払って送ってもらいました。

参考までに、売り手の商品説明は以下のとおりです。


「動作確認済み」となっていますが、私の手元で動作確認をしたことはありません。
上の元記事のコメント欄で、常連のS.Uさんとやりとりをしていますが、この時計はシンクロナスモーターで動いている可能性があって、その場合、動作は交流電源の周波数に依存します。アメリカと同じ60Hz地域(西日本)は大丈夫そうですが、50Hz地域だと周波数変換器をかまさないと、正確に動作しないかもしれません(すべて想像なので、違っていたらごめんなさい)。

そんなわけで、動くかどうかは不確実、動いても正確に動くかはこれまた不確実なので、お代は不要です。送料のみ着払いでご負担ください(送料はクロネコヤマト120サイズで、大体1600~2000円ぐらいです)。

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引き取ってもいいよというご奇特な方がいらっしゃれば、コメントの「メールアドレス」欄(管理人以外には非公開です)にアドレスを記載の上、コメント欄でその旨お知らせください。どうぞよろしくお願いいたします。

【5月6日記】
上記時計の引き取り手が無事見つかりました。関心をお寄せいただいた方に感謝申しあげます。

ハーシェル去って200年2022年04月16日 07時52分04秒

天王星の発見者として有名なウィリアム・ハーシェル卿(1738-1822)

でも、天王星の発見はハーシェルの業績のほんの一部で、彼自身あまりそれを高く評価していませんでした。それよりも、赤外線を発見したこと、思弁ではなく実観測によって「宇宙の構造」――現代の目から見れば「銀河系の形状」――を決定しようとしたこと、星雲や星団の膨大な目録作りに挑戦したこと…etc.、時代を画する研究を、彼は次々と行い、世に問いました。

そして、彼はもともとプロの音楽家・作曲家でもあったのです。
彼は実に唖然とするほど多才でエネルギッシュな人でした。

(ハーシェルの肖像画額。背景が一寸ハーシェルに申し訳ないです)

そのハーシェルが世を去って、今年でちょうど200年になります。
現在、その記念行事が世界各地で行われていますが、日本でも日本ハーシェル協会が中心となって、記念展の開催が予定されています。

■「(仮)ウィリアム・ハーシェル没後200年記念展」について
開催は今秋、場所は名古屋。
天文学史を回顧し、偉大な「天界の冒険者」を偲ぶ催しです。
皆様お誘いあわせの上、ぜひご参観いただければと思います。
(詳細な日程等は、決定後に改めてお知らせします。)

なお、私も協会員として企画に関わっている関係で、準備作業のためにブログの方はしばらく記事が間遠になります。